王子窯モロ

おうじがまもろ


瀬戸市指定建造物 1基
平成31年3月19日指定 所在地 瀬戸市東洞町63
所有者 個人
文化財 木造2階建、南面下屋(大正2年(1913)拡張か)、切妻造、桟瓦葺、平入
時代 明治33年建造

 王子窯モロは、旧瀬戸村洞地区にあり、明治33年(1900)に建造された陶器生産の工房であり今日まで使用され続けている。間口20間(実長10間)、奥行6間(実長3間)で東西に細長い。モロは間口16間(実長8間)のものが多く、規模としては少し大きめなものといえる。 
 1階の西、北、東面は厚い土壁を巡らし窓はほとんどなく昼間でもうす暗い。これは、成形前の粘土保管や製品のロクロ成形等を行う際に急激な乾燥を避ける特性をもつ。北壁面に接するようにして現在使用されている電動ロクロが5か所にみられるが、かつては床下の動力ベルトを通じて3箇所以上のロクロを同時に稼働させていた痕跡が確認できる。南東床面には成形前の粘土置き場があり、西部の2間半のスペースと1階天井近くにサシダナと呼ばれるロクロ成形後の素地を置く板が設置されている。
 1階で成形された素地は、南側の干し場で乾燥された後、2階の倉庫で釉薬をかけられ、窯で焼成されるまでの間保管された。1階天井には2ヶ所の2階への登り口があり、ここに梯子をかけるなどして素地を2階に運び込んだものと思われる。2階は南側下屋庇にも拡張部があり、素地を大量に保管することができた。2階に保管された焼成前の製品素地は、2階西側の出入口からそのまま運び出され、尾根筋を伝って連房式登窯の王子窯(昭和43年(1968年)まで焼成)にもたらされた。
 このように、1階で成形、2階で焼成前製品素地の施釉と保管を行い、焼成の窯炉までを機能的につなげる工夫が込められている「王子窯モロ」は、その建造年代においても確認されている中では最も古いものであり、文化財的価値は高いと考えられる。

参考 三輪邦夫「王子窯モロ」(『瀬戸市歴史的建造物実測調査報告書』2016年)

王子窯