伝承地 瀬戸市湯之根町あたり?
北新谷(きたしんがい:今の池田通りを北にのぼりつめたあたりのこと)というところに、堀出し地蔵というお地蔵さんがあります。
このお地蔵さんには、こんなお話があります。
むかし、加藤治右衛門(かとうじえもん)さんという人がいました。治右衛門さんが、ある夜、眠っていると夢の中にお地蔵さんがあらわれて、
「わたしは、むかし観音(かんのん)山にいた地蔵だ。しかし、何年も何年もたつうちに、とうとうお前の家の東の方にある池の中に、沈んでしまって、だれもわたしが池の中にいることを知らない。わたしは、とても悲しい。池の中からほり出して、まつってくれ。」と、言いました。
そこであくる朝、治右衛門さんは家族みんなで、池の底をさらえてみました。するとどうでしょう。池の底にお地蔵さんが泥まみれになって、沈んでいたではありませんか。夢の中のお地蔵さんとまったく同じです。
「おお、やっぱりお地蔵さんが、こんなところにどろんこでござったか。お気のどくに。わしらで、まつってあげよう。」
治右衛門さんは、お地蔵さんをきれいに洗い、宝泉寺(ほうせんじ:瀬戸市寺本町にある寺。瀬戸公園の南側に塔の見える寺)からお坊さんをまねき、お経をあげてもらいお地蔵さんをおまつりしました。
それから後、多くの人々が、このお地蔵さんをおまいりに来ました。
「これが治右衛門さんの夢の中で出てきたお地蔵さんか。ありがたや、ありがたや。」と言って、みんながおがんでいったそうです。