瀬戸陶磁器会館

せととうじきかいかん


瀬戸市陶原町
瀬戸陶磁器会館は、南東に突出したL字型平面の建物の一部(北東部分)が昭和10年3月に完成した旧瀬戸陶磁器工業協同組合の「総合協同販売所見本陳列場」である。陶磁器の計画的な生産と共同販売を目的に、大正15(1926)年瀬戸陶磁器工業協同組合が設立、以後4回にわたる改組を経て現在の愛知県陶磁器工業協同組合に至る。昭和9年3月7日付けの「丹羽設計事務所」の起工届が残されていて旧状の詳細が明らかである。建築当初は1階に事務所・役員室・応接室、2階に見本陳列室と会議室、3階に大ホールが設けられていた。
瀬戸川に面した北玄関のある中央部分が当初の建物で、外部扉は失われているものの、外部を門型に飾るテラコッタ装飾は華やかで、腰をタイル張りとし陶板の装飾を張る内装とともに旧状を残している。3階の理事長室は床を寄木とし、壁面は腰板張り、外套掛けや机など当初の調度品も残る。また大ホールも、クロス張りや内装、演台脇の陶製照明、梁型を露出した構成に旧状を伝える。
瀬戸を見渡すこの建物の屋上から昭和21年の行幸時に天皇が視察しており、瀬戸の近代を伝える史跡でもある。
(『愛知県の近代化遺産』)