シデコブシ

しでこぶし


モクレン科モクレン属の落葉小高木で日本固有種である。自生の分布範囲は東海三県に限られ、現在は準絶滅危惧種に指定されている。樹高は高いもので10m以上、幹周りは20cm以上のものもある。根元から分かれ株立ちする。花は早春に開葉に先立って咲き、白い花を咲かせる。花の形が四手(しで)に似たコブシのような花を付けることからこの和名となっている。花の開花期間は約10日、株全体では20日間程度開花する。シデコブシの生育地は、湧水のある山裾や小さい谷の湿った谷底で、瀬戸市内では、東部や南部の丘陵内に多くみられ、現在までに12,000余株の生育株が確認されている。特に市域中央の馬ヶ城町や北側の下半田川町に大群落がみられる。しかし近年、集落近くの里山が放置され、下草刈りや間伐が行われなくなっており、林内環境の悪化による生育範囲の狭まりが懸念されている。

梅雨左衛門(ギンリョウソウ)

つゆざえもん(ぎんりょうそう)


 江戸後期、尾張藩士内藤東甫の記述による「張州雑志」には、瀬戸市内に産する植物238種と菌類15種が記載されている。「梅雨左衛門」はそのうちの1種で梅雨期によく発生することと、別の伝説とが結びついて名付けられたものである。別書によれば「露左衛門」と記された例もある。本種は、イチヤクソウ科のギンリョウソウで山地のほの暗い林下の腐食土にはえる腐生植物で、葉緑素がなく、根のほかはすべて銀白色である。茎は多肉質、高さ10~20㎝、葉は鱗片状に退化して互生し、花は鐘形で、5~8月ごろ茎の頂に1個下向きにつき、種子によってふえる。地上部は枯れると黒色に変わり、生きているときとは全く違ったものになる。ギンリョウソウの名の由来は、鱗片葉につつまれた銀色の体全体を竜にみたて銀竜草と呼ぶ。また、ほの暗い山林下にひっそり白くはえる姿から幽霊茸と呼ばれることもある。