双頭のへび 

そうとうのへび


伝承地 瀬戸市城屋敷町
 今からおよそ八五年前のある日、今村の小三郎という少年が、八王子神社のうらの木のしげみへ入って行きました。
「あっ。へびがけんかしとる。」と、小三郎は思わずびっくりしたように大声をはりあげました。一緒に遊んでいた二人と、そっと近づいてよく見てみると、何とそれは頭が二つあるへびでした。へびは、おどろいて、しげみに逃げ込むところでした。
「おい。つかまえよう。」
「ぼうを持ってこい。」などと、大さわぎしながら少年たちは、とうとうへびをつかまえてしまいました。
 少年は、へびを家に持ち帰り、箱に入れてかっていました。
「頭が二つあるへびがいたげな。」と、口々に伝わり、大評判になりました。
「売ってくれ。」
「たのむに、わけてくれ。」と、たくさんの人がやって来ました。だから、へびの値段はだんだん高くなっていきました。
 ある日、一人の男から
「見世物にするから、ぜひ売ってくれ。」と、たくさんのお金を出して強くたのまれましたので、少年はとうとう五円で、その人に売りました。
 少年は、へびをつかまえたとき、いっしょにいた子に一円あげ、後のお金はすぐ使うあてがなかったので、貯金しておきました。
 ある日、ふと思いついたことがあります。
「あそこは、松原の殿様(松平下総守広長のこと。今村城主だったひと)の城あとだ。へびはきっと殿様の使いにちがいない。殿様のためにお金を使おう」
 少年は、そう考えました。その後、そのお金をもとに志のある人たちと力を合わせて、城あとをりっぱに整備しました。