馬ヶ城水源地・浄水場

うまがしろすいげんち・じょうすいじょう


瀬戸市馬ヶ城町
 瀬戸市街地の中央を流れる瀬戸川沿いに、尾張瀬戸駅から多治見方面へ10分ほど車を走らせ、右折して山あいに入ると緑豊かな風景に変わる。「馬ヶ城浄水場」と縦書きの表札が見えてくる。
 資料によると、昭和6(1931)年に着工、翌年に竣工している。同8(1933)年に給水を開始している。設計者不詳、施工者石川鎌吉他4名、事業費約69万円。広大な敷地に管理棟・濾過地・貯水池堰堤などが配置されている。管理棟は木造洋小屋平屋建で間口7.5間、奥行き4間の長方形のシンプルなプランである。屋根半切妻屋根(ドイツ破風)、スレート菱葺、換気用飾り窓を設けている。近年、屋根は銅板葺に替え、旧寄宿室は展示室に改修されたが、創建当時の雰囲気は失っていない。
 三つの濾過池は石積み造で今でも現役である。1日最大5200立方メートル、瀬戸市内野約1割の水を供給している。水の濾過には創建当時から緩衝濾過方式を採り、濾過池は下から玉石・砂利・濾過砂の順に積み上げ、濾過速度は1日3~6メートルと遅く、微生物の働きと自然の浄化機能を利用して濾過することから水がおいしいという特性がある。反面、大量の供給水のためには広大な敷地が必要とされ、戦前はともかく現在は濾過速度が速くて敷地面積が少なくて済む、薬品を用いた急速濾過方式が一般的になり、本浄水場の方式は全国の5%たらずという。
馬ヶ城貯水池の総貯水量は24万立方メートルである。(『保存情報Ⅱ』)